都市と公園

東京の公園について調査中です。暫定的な結論は間もなく。

目次

総 論

概要 - 都市と公園

 

事前調査編

事前調査(国交省から) - 都市と公園

補足(目的の再確認) - 都市と公園

事前調査の分析Ⅰ - 都市と公園

事前調査の分析Ⅱ - 都市と公園

 

実地調査編

御茶ノ水[調査結果-1] - 都市と公園

南砂町[調査結果-2] - 都市と公園

銀座[調査結果-3] - 都市と公園

勝どき・豊海町[調査結果-4] - 都市と公園

王子[調査結果-5] - 都市と公園

渋谷[調査結果-6] - 都市と公園

 

事後調査編

公園の未来像 - 都市と公園

 

結 論

考察 - 都市と公園

感想 - 都市と公園

結論-未執筆

文献調査-総論

f:id:yuuduru:20190227132700j:plain

今回研究を再開するに当って、①都市計画の観点から、②個々の事例を中心に、調査を進めようと決めました。

そのため、まずは文献調査として、都市計画について包括的に書かれた本や、公園のリノベーションの事例が多数収録された本を読むことにしました。

初めに購入した本は以下の5冊です。

 

1. 初学者のための都市工学入門(高見沢実/鹿島出版会

2. 都市論を学ぶための12冊(若林幹男/弘文館)

3. RePUBLIC 公共空間のリノベーション(馬場正尊,Open A/学芸出版社

4. 広場のデザイン(小野寺康/彰国社

5. 時代を再読せよ 現代都市理論講義都市計画(今村創平/オーム社

 

1.と2.を都市工学或いは都市全般について学ぶため、3.と4.はリノベーションの事例の収集のため、5.は現代から未来へ向けての都市のあり方を考えるための書籍として、購入しました。

次回からは、個々の本について紹介したいと思います。

更新が疎らでごめんなさい……。

 

 

再開

一旦レポートにまとめて終了していたこの研究ですが、当初の目的である、「公園の目的と分布を体系的にまとめる」ということは達成できませんでした。しばらくの時間が空きましたが、調査を再開したいと思います。

 

再チャレンジということで、この度は前回疎かにしがちであった文献調査、とくに都市工学などの勉強からはじめていこうと思います。細かな方針はまた追って。

感想

とても主観的なことで考察には書けないのでこの場で。

実地調査中に思ったこととして、

「公園って意外とテキトーに作られているなあ」

ということがある。

都市の計画段階から公園を計上していたものは案外少なく、後づけで無理やり、狭い空地に植樹したりベンチを置いたりとされているのが目についたのである。

私の住んでいるところは新しい住宅街で、公園が概ね均等に分布している―つまり、計画的に作られたのだと予想できる―。そんな環境で生まれ育ったので、特に渋谷や王子では「公園が遠い」「公園が近すぎる、でかすぎる」と言った感想を抱いて、驚いた。

公園の分布は存外にアンバランスだった。

そういえば、この調査においては現在という視点でしか物を見ていなかった。だが、公園は最初からあったのではなく、都市の発達と同時に作られてきたものなのだ。時間軸の視点も必要だった。

実地調査でも、人が多く住んでいるという点で共通している勝どき(埋立地)と南砂町(下町)そして王子(台地)では少しずつ異なった結果が得られている。これは、勿論立地も関係するが、それぞれ発達した年代にずれがあることに影響するのではないか。こう考えてみても、やはり都市の発展という「歴史」もまた公園の分布に関わっていようことは明らかである。

今後は新旧の地図を見比べながら、また追加の調査を行いながら、公園に対する見識を深めていきたい。それが済んだ時、私は結論を書こうと思う。

考察

公園の特性が如実に街柄と関係している点がいくつも見つかった。1つとして、子供の多さは公園の特徴や数に反映されている。子供が多いとみられる勝どきでは遊具主体の公園が主となり、南砂で目の前に小学校と児童館がある公園は鬼ごっこなどに使えそうな広場や凝った複合遊具があった。逆にサラリーマンが行き交う御茶ノ水オフィス街エリアは公園という形態でこそなけれ、公園の設置を1つの手段としてサラリーマンの憩いの場となるような街の設計が進んでいた。行政で公園を設置・設計するにあたり周囲の利用者の層は相当意識されるものと考えられる。

また、南砂町などで強く意識されたのが、公園の整備度は街の整備度と正の相関があることだ。駅付近の高層マンションやショッピングモールが立ち並ぶ再開発エリアでは、需要に応じてか行政が公園の整備を勧めていた。対照に、荒川沿いの少し寂れた町工場や築年数の古い建物が並ぶエリアは遊具にも錆が目立ち、緑も少ないなど、寂しい印象を受けた。

また、銀座では、近くにある日比谷公園によって憩いの場としての機能が、デパート等によって待ち合わせの場所としての機能が果たされているなどの要因で公園の数が少なくなっている。夜間人口が少なく住まいを置く住民が少ない御茶ノ水文化エリアも公園の数が少なかったことを勘案すると、そもそも街として公園の必要性が低いと極端に数が少なくなると推論できる。

公園は往々にして街の発展に寄与し、その利用者の数や層に合わせた機能を持っている傾向があることが明らかになった。

このように、結果として公園の特徴や数が街の性質を反映したことは明らかになったものの、当初の目的であった人口などのデータとの比較による定量的で横断的な観点、そもそもその場所になぜ公園ができることになったのかという歴史的な観点などが抜け落ちている。歴史的な観点とは例えば、もともとどういう土地だったかなどである。今後定量的な関係を明らかにするにあたり、こうした観点は考慮に含める必要が出てくると思う。

渋谷[調査結果-6]

f:id:yuuduru:20180223010733j:plain

渋谷駅


[基準駅]東京急行電鉄東横線田園都市線東京メトロ銀座線、半蔵門線副都心線京王電鉄井の頭線・JR山手線渋谷駅
[調査範囲]渋谷1-3、東1-2、猿楽町の東部、鶯谷町、鉢山町、南平台町の東部、桜丘町、道玄坂、宇田川町、神南1、神宮前5、6の一部
[調査した公園]
神南1:北谷、神宮前5:神宮前5丁目、神宮前6:宮下*(工事中)、神宮通、渋谷1:美竹、渋谷3:(金王八幡横)、並木橋児童遊園地*、東1:常盤松、東2:氷川の杜、氷川みかん、氷川つるかめ、鶯谷町:鶯谷児童遊園地、鉢山町:鉢山、猿楽町:猿楽古代住居、

*のついた公園について、今回実地調査は行っていない。

渋谷は、渋谷川稲荷橋を基準として、宇田川―渋谷川の東・西岸に、また都道246号線(青山通り玉川通り)を基準に南北にそれぞれ分けて、大きく四つに分類できる。

α 東岸北部(神南・神宮前・渋谷(北部)・宇田川町(東部)など)

β 西岸北部(道玄坂・松濤・神山町・円山町・神泉町・宇田川町(西部)など)

γ 西岸南部(桜丘町・南平台町・鶯谷町・鉢山町・猿楽町など)

δ 東岸南部(東・渋谷(南部)など)

α 東岸北部

区役所(仮庁舎)、郵便局、国連大学等、渋谷の中心地であることに変わりはないが、百貨店や服屋などの商店が所狭しとならぶ、渋谷と言って想起される繁華街(β)とは異なる。勿論、宇田川(現・井の頭通り)方面、特に山手線外へ出ると渋谷らしい賑わいがある。区役所本庁舎やNHK放送局はこちらの山手線外にある。
昼夜間人口を調べてみると、渋谷1-3がそれぞれ昼夜間人口比率が1,151.7 、4,480.3、2,375.2 と100を遥かに超えている。このためか、αに属する北谷、美竹といった公園は、やはり住人、子ども重視のものではなく、相対的に言って「空地に木とベンチを置いた」ような仕上がりである。これはδと比較すると差異があるので、確認されたい。
神宮前5,6の方へ行くに従っては住宅も増えるらしく(若しくは昼間人口が減るらしく)、昼夜間人口比率がそれぞれ345.1 、998.1となった。現に神宮前5丁目などの公園では少し遊具も見られる。神宮通と宮下の両公園については、来訪者が通行する広場のような体である。
なお、宮下公園については近年幾らか騒動が起きており、この原因は公園というものに対する役所・企業・民衆の見方の違いから生まれているようであるから、詳細な調査を後に記す。

β 西岸北部

ハチ公像・モヤイ像・スペイン坂・センター街・文化村通り・道玄坂や「スクランブル交差点」など、渋谷と言って想起されるものの全てはこの区域に属する。宇田川町・道玄坂1を中心に昼間は極端に人が集まる地帯で、昼夜間人口比率は道玄坂、宇田川町、神南1で4397.8、3104.1、2125.3とαを大きく上回る。そのためか、そもそも公園が少ない。実際、調査範囲の周囲で、βには円山町児童遊園のただ一つしか所在しなかった。またそれも駅から遠いもので、直線距離で300m以上離れている。α、γ、δでは概ねが駅から200m付近にあるから、一つの特徴と言えよう。

また、これは「考え過ぎ」と言われても仕方があるまいが、この公園の少なさには代々木公園や明治神宮が関係している可能性も捨てきれない。というのも、事前調査の考察や銀座の調査結果でも扱ったように、緑地や避難先として使える広大な寺社地や都立公園などがあると、近隣公園・街区公園の設置数が同様な性質を持つ町と比較して減少する可能性がある(あくまで可能性である)。こう考えれば、同様に繁華街を持つ池袋に幾つかの中規模の区立公園があって、渋谷に一つもないのはこのためだとも思われる。今後の調査では「定性実験」のように「同様だが条件が一つだけ変化するような町」を二つずつ選択して比較調査していきたい。データを積み重ねるうちに公園に期待される役割というものが浮き出てくるだろう。

京王井の頭線神泉駅があるため、円山町児童遊園は渋谷駅の最寄りの公園として扱わなかった。この「基準駅」という概念の定義の甘さから調査範囲に含むか否かの判断が曖昧になってしまったのは今回の反省の一つである。しかし、今回の渋谷の調査では範囲そのものが縦長であるものの、αからδの四地域はほぼ同じ大きさであり、この分析に与える影響が少ないことは強調しておきたい。

γ 西岸南部

勿論ここも渋谷とあって駅の近くの賑わいや垢抜けた感じは垣間見えるが、δとともにどこか「麻布六本木の延長」と言った印象が拭いきれない。例えば六本木通りを溜池からずっと西進してきても渋谷ならではの華やかさがないので、渋谷に到着したことにあまり気がつかない。通り沿いで言えば六本木より見劣りがするほど。東京の昏さを持ち合わせていて、案外ディープなところかもしれない。駅の近くである桜丘町が1240.6であるのを除けば、範囲内の昼夜間人口比率は全て400を下回っている。十分大きい数値ではあるが、渋谷では相対的に少ないか。
夜間人口が多い、つまり住宅があるということである。裏付けるように、鉢山を筆頭としたγの公園は遊具の設置が成されていた。設計では子どもを想定していることになる。だが悲しいかな、やはり渋谷にあって公園は子どもが遊べるほど明るくなかった。これがδでは子どもは活潑に遊べるので、同じ南部でも差異が見つけられたことになる。
付近には西方に西郷山公園があるので、公園の需要は満たしているのかもしれない。反対に、南方には代官山が広がり、南北を繁華街に挟まれる形となっている。

f:id:yuuduru:20180223010820j:plain

渋谷川

写真の通り、ここからは渋谷川の開渠区間なのだが、殺伐たる風景が広がる。東急電鉄は河岸をテラスなどへ再開発するよう計画しているようだ。

δ 東岸南部

γと似て華やかさには少し劣るが、γと決定的に違う点が挙げられる。それは、商業地・住宅の棲み分けができていることである。特に東などは住宅中心なので、きちんと公園が整備されている。調査した四地域の中で公園が一番多かったのはこのδであった。故に、来訪者・浮浪者・労働者・住人で混乱しているαと比べれば都市計画はよく成されており、住宅に特化した公園が設置できるのも事実だろう。調査した公園では、γに対して面積は劣ることはあっても、管理の成されたきれいな公園ばかりであった。αと比べても大きな違いである。
先程から出している昼夜間人口比率のデータでは、東1,2がそれぞれ260.6 、104.1とあり、氷川の杜公園等3つの公園が集中していた東2で住宅の比率が大きいことがわかる。 またγ最大の桜丘町と比較して、渋谷2の昼夜間人口比率は2,375.2なので駅近くでも賑わっているのは(南部では)こちらだと言える。
また、東1,2の人口の合計も、γの猿楽町、鉢山町鶯谷町の人口の合計もほぼ7000近くで互角であることが同じ資料からわかる。
まとめると、γとδとの比較で、
・γは住人が多いが、公園が少ない。
・δはγとほぼ同等の人口がありながら公園も多く、賑わっている。
となってしまう。
繁華街もなく立地も似通ったγ、δの二者間でこれほどの差が生まれるのはよくわからない。歴史的背景なのか都市計画の失敗なのか、その真偽はこの調査ではよく知れないが、しかし公園調査の上で重要な手がかりとなるだろう。

※前述と同様に、δには西郷山公園のような大きい公園が近接していなかった。これも公園数増加の原因かもしれない。

 

―参考文献―
※1 東京都統計局(調査実施:2010)「平成22年国勢調査による東京都の昼間人口 第11表 町丁・字等別昼間人口(推計)」

平成22年国勢調査による東京都の昼間人口


※2 産経デジタル(2017)「「宮下公園」 渋谷区とナイキ、命名権協定途中解約 名称変更実現せず 公園は閉鎖」、<http://www.sankei.com/life/news/170401/lif1704010003-n1.html,2018年2月22日閲覧>

王子[調査結果-5]

f:id:yuuduru:20180223011208j:plain

音無川親水公園

[基準駅]JR東日本東京メトロ南北線都電荒川線 王子駅

[地区] 下図

[調査した公園] 大原児童遊園・滝野川馬場児童遊園・名称不明公園・ 北区立四本木児童遊園・北区滝野川三丁目・石神井川近く・北区中央公園・王子駅前公園・柳田公園・北区立王子一丁目公園・王子二丁目まちかど広場

f:id:yuuduru:20180223000218j:plain

地区

[調査結果]

まず、王子駅の東側と西側では公園の種類がガラリと変わっていた。東側には、比較的小型の公園が多く、また、数も少ない。どちらかというと、地域の集い場所のようになっていた。一方で西側には、大型の公園が存在し、また、一つあたりの公園に面積は東側より大きかった。公園の数も多く、子供たちが遊ぶための存在となっていると思われる。

東側の公園といえば王子駅前公園や柳田公園などの名が挙がる。柳田公園は中層ビルが並んだ道の反対側にあるような場所であり、遊具等は設置されているものの、ベンチが非常に多く、地域の休憩の場として使われていると想像ができる。また、王子駅中央公園は「ベンチと緑」と表現するのがふさわしいといえるぐらいの公園である。広さも十分(かなり広い)であり、駅前にあることから、王子の中心的な憩いの場となっているだろう。

一方で西側には、小学校や幼稚園などがあつまり、住宅街としての都市が出来上がっていた。また、その影響もあって、公園の数は東側に比べれば多かった。一つ一つの公園の規模は小さいが、遊具はかなり充実していた。また、遊具が充実しているような公園の周りにはアパートやマンションが並んでいたため、そこの公園を使っているのはその周辺に住む人々、特に子供たちではないかと想像できる。また、西側には、大きな公園が一つあった。「北区中央公園」である。この公園は本当に広い。ちなみに、隣には自衛隊の十条駐屯地があり、かなりの広範囲をこの二つで占領しているとわかる。この公園には遊具はもちろん、テニスコートや野球場(軟式か硬式かはわからない)などの設備もあり、かなり区が、積極的に手入れをしているのだと想像できる。この公園にはたくさんの木々がそびえたっており、外から見ると「緑!」という感じなのだが、中に入ってみると、思ったよりも光が差し込んでくる設計になっているのか、太陽の光が十分に差し込んできているのがわかった。さらに、僕らが現地調査をした時には、区の人間と思われる人が木々の作業をしていた。ここからも手入れをしていると想像できる。

 王子という町は治安が良いといわれている。今年の1月に、北区王子~、北区滝野川~と、名がつく住所内で起きた事件数は42件(警視庁調べ)。この中に凶悪事件が1件起こっているが、滝野川6丁目で、最寄りは板橋駅と思われるので無視します。このなかで気になるのが「万引き」。これは一概には言えないが、若い人(小学生など)が多いという裏付けにもなりそうである。また、窃盗侵入が王子ではないことは評価するべき点である。

 また、王子という町は比較的家賃が周囲より高いというのも特徴的である。下の図はSUUMOによる王子駅の賃貸マンション家賃相場の情報

f:id:yuuduru:20180223000221j:plain

SUUMOによる王子駅の賃貸マンション家賃相場の情報


である(2018.02.22.19:30)。東京都内では比較的高いものの、ファミリーで住むには適切な(お手頃な値段)であるといえる。

 

さらに、王子という町の人口にはある特徴がある。30代から40代の人口が多いのだ。この年代だと、子育てをしている年代でもあり、上の説明と話が合う。ただし、年配の方も多く、東側の公園のようなものが残っているのが感じ取れる。

【ファミリーと年配の方が共生している、安全な街「王子」】とでも言っておこう。

f:id:yuuduru:20180222235952p:plain

王子の町は様々な年齢の人が共生していることによって、東側と西側で大きく違う街並みが出来上がっているのは見てわかる。三つの会社の路線が混じるだけあって、都市としての規模は大きいが、開発されているところと、昔の名残が残っているところ、というように都市の中で区切りが存在している。その境目がJRとなっている。公園と住民が密接にかかわっている都市の代表例として挙げられるだろう。